傍聴した事件の詳細

裁判傍聴キロク。
　
　被告Ａ（31）　被害者Ｂ（33）を殺害。
ＡはＢ氏におよそ７年間のうちに９００万円の借金をさせられ
「自分が消費者金融で借りた金で　Ｂが生活しているのは許せない」
「このままでは自分は一生彼の食い物になってしまう」
という動機から殺害を決意。
ＡとＢ氏の間の金銭貸借は、７年前に始まる。
二人は訪問販売会社で知り合い、Ｂ氏がここを辞めて一緒に事業をやろうと持ちかけ、その資金としてＡに消費者金融から金を借りさせたことが発端。
Ａいわく、Ｂ氏はカラダも大きく、話術も巧みで、いつの間にかイヤと言えない主従関係になっていた。Ａは消費者金融からお金をドンドン借りさせられ、５年前の時点で５００万円ほどの借金ができていた。

そのことを親にも相談できないＡの様子を見たＡの妹が地元の警察に相談に行くが、
「Ｂ氏に脅されて作った借金である」という証拠が必要といわれ、警察へ協力を求めることを諦める。
どうしようもなくなり、ようやく父親に相談。Ａの父親はＢ氏の元へ出向き、借金はＢ氏が返すことを確約させ、さらに二度とＡに近づかないことを約束させる。
借金の５００万円の返済は父親が肩代わりし、Ｂ氏がＡの父親にお金を返済する仕組みとなっていたが、半年もすると返済は滞り、音信不通になる。
しかしＡの父親も息子との縁がこれで切れるならと、深追いはしなかった。
しかし、それから５年後、ちょうど昨年の１２月、Ｂ氏がＡの職場に現れる、当時Ａはメガネ店のスタッフだった。
Ｂ氏はＡに「自分が経営しているロシアンパブが危ない、やくざにみかじめ料を払わないと店をつぶされる。お金を貸してくれないか」と持ち掛けてくる。
貸すことは出来ないとＡは言う。
この会話は勤務先の店頭で行われたのではなく、就業後、焼肉店にて行われた。
（友人を名乗って近寄ってきたＢ氏を気の弱いＡはむげに突き放せなかったのではないか。恐怖心も手伝っていたと推測される）
近況を話す中、実はＡにも借金があることが判明する。
父親に肩代わりしてもらい借金は０になっているＡだが、そのお陰で優良顧客になっていたＡは自身で２５０万円の借金を消費者金融にしていた。
Ｂ氏は言う。今自分にお金を貸してくれたら、店を続けられる。その売り上げで未納分の借金（５年前の５００万円の残り）を返すことが出来る。そのお金をＡの現在の借金（２５０万円）の返済に充てればよい。
以前、自身の意思の弱さによって父親に５００万円の借金をさせたＡは父親に借金があることは言えず、その借金の返済のメドも立っていなかったのだろう。
Ｂ氏の申し出は、断りきれない自分の弱さを肯定する言い訳になった。
Ａは消費者金融に２５０万円借り、Ｂ氏に渡す。ここからまた借金の連鎖が始まった。
数回のやりとりの末、借金が５００万に達した。（900-250-500＝250）
この借金は自分の命だ、必ず返してくれというＡの言葉もむなしく、B氏には返済する気がなかった。
このままではこの先もずっと自分はＢ氏に食い物にされ続けるだろう、この連鎖から逃れるには、自分が死ぬか、Ｂ氏を殺すしかない。
こうやってＡのＢ氏殺害への動機が固まった。
殺害にはペティナイフを使用。
当初の殺害計画場所に到着したが都合が悪く、ＪＲ筑肥線沿いのとある駅付近に移動。
制止するＢ氏の「助けてくれ」に応じず、腹背中、頭部、顔面を含め合計５０箇所以上を刺す。
途中でペティナイフが折れ、車に別の刃物を取りに戻る。
生死を確認したところ、まだ息があることを確認。這って逃げようとするＢ氏の顔面、頭、胸などにとどめを刺す。最終的に胸などを足で押し、死亡したことを確認。
現場が駅の側で通過する電車の乗客に犯行を目撃されたと思い、友人に相談、出頭した。
取調べでは、追い詰められ冷静な判断が出来なかったと供述しているが、Ａは殺害後、出頭前に風俗店に寄っている。